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そして青い橄榄(かんらん)の森が见えない天の川の向うにさめざめと光りながらだんだんうしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽车のひびきや风の音にすり耗(へ)らされてずうっとかすかになりました。
「あ孔雀(くじゃく)が居るよ。」
「ええたくさん居たわ。」女の子がこたえました。
ジョバンニはその小さく小さくなっていまはもう一つの緑いろの贝ぼたんのように见える森の上にさっさっと青じろく时々光ってその孔雀がはねをひろげたりとじたりする光の反射を见ました。
「そうだ、孔雀の声だってさっき闻えた。」カムパネルラがかおる子に云(い)いました。
「ええ、三十疋(ぴき)ぐらいはたしかに居たわ。ハープのように闻えたのはみんな孔雀よ。」女の子が答えました。ジョバンニは俄(にわ)かに何とも云えずかなしい気がして思わず
「カムパネルラ、ここからはねおりて游んで行こうよ。」とこわい顔をして云おうとしたくらいでした。
川は二つにわかれました。そのまっくらな岛のまん中に高い高いやぐらが一つ组まれてその上に一人の寛(ゆる)い服を着て赤い帽子(ぼうし)をかぶった男が立っていました。そして両手に赤と青の旗をもってそらを见上げて信号しているのでした。ジョバンニが见ている间その人はしきりに赤い旗をふっていましたが俄かに赤旗をおろしてうしろにかくすようにし青い旗を高く高くあげてまるでオーケストラの指挥者のように烈(はげ)しく振(ふ)りました。すると空中にざあっと雨のような音がして何かまっくらなものがいくかたまりもいくかたまりも鉄炮丸(てっぽうだま)のように川の向うの方へ飞んで行くのでした。ジョバンニは思わず窓からからだを半分出してそっちを见あげました。美しい美しい桔梗(ききょう)いろのがらんとした空の下を実に何万という小さな鸟どもが几组(いくくみ)も几组もめいめいせわしくせわしく鸣いて通って行くのでした。
「鸟が飞んで行くな。」ジョバンニが窓の外で云いました。
「どら、」カムパネルラもそらを见ました。そのときあのやぐらの上のゆるい服の男は俄かに赤い旗をあげて狂気(きょうき)のようにふりうごかしました。するとぴたっと鸟の群は通らなくなりそれと同时にぴしゃぁんという溃(つぶ)れたような音が川下の方で起ってそれからしばらくしいんとしました。と思ったらあの赤帽の信号手がまた青い旗をふって叫(さけ)んでいたのです。
「いまこそわたれわたり鸟、いまこそわたれわたり鸟。」その声もはっきり闻えました。それといっしょにまた几万という鸟の群がそらをまっすぐにかけたのです。二人の顔を出しているまん中の窓からあの女の子が顔を出して美しい頬(ほほ)をかがやかせながらそらを仰(あお)ぎました。
「まあ、この鸟、たくさんですわねえ、あらまあそらのきれいなこと。」女の子はジョバンニにはなしかけましたけれどもジョバンニは生意気ないやだいと思いながらだまって口をむすんでそらを见あげていました。女の子は小さくほっと息をしてだまって席へ戻(もど)りました。カムパネルラが気の毒そうに窓から顔を引っ込(こ)めて地図を见ていました。
「あの人鸟へ教えてるんでしょうか。」女の子がそっとカムパネルラにたずねました。
「わたり鸟へ信号してるんです。きっとどこからかのろしがあがるためでしょう。」カムパネルラが少しおぼつかなそうに答えました。そして车の中はしぃんとなりました。ジョバンニはもう头を引っ込めたかったのですけれども明るいとこへ顔を出すのがつらかったのでだまってこらえてそのまま立って口笛(くちぶえ)を吹(ふ)いていました。
(どうして仆(ぼく)はこんなにかなしいのだろう。仆はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向うにまるでけむりのような小さな青い火が见える。あれはほんとうにしずかでつめたい。仆はあれをよく见てこころもちをしずめるんだ。)ジョバンニは热(ほて)って痛いあたまを両手で押(おさ)えるようにしてそっちの方を见ました。(ああほんとうにどこまでもどこまでも仆といっしょに行くひとはないだろうか。カムパネルラだってあんな女の子とおもしろそうに谈(はな)しているし仆はほんとうにつらいなあ。)ジョバンニの眼はまた泪(なみだ)でいっぱいになり天の川もまるで远くへ行ったようにぼんやり白く见えるだけでした。
そのとき汽车はだんだん川からはなれて崖(がけ)の上を通るようになりました。向う岸もまた黒いいろの崖が川の岸を下流に下るにしたがってだんだん高くなって行くのでした。そしてちらっと大きなとうもろこしの木を见ました。その叶はぐるぐるに缩れ叶の下にはもう美しい緑いろの大きな苞(ほう)が赤い毛を吐(は)いて真珠のような実もちらっと见えたのでした。それはだんだん数を増して来てもういまは列のように崖と线路との间にならび思わずジョバンニが窓から顔を引っ込めて向う侧の窓を见ましたときは美しいそらの野原の地平线のはてまでその大きなとうもろこしの木がほとんどいちめんに植えられてさやさや风にゆらぎその立派なちぢれた叶のさきからはまるでひるの间にいっぱい日光を吸った金刚石(こんごうせき)のように露(つゆ)がいっぱいについて赤や緑やきらきら燃えて光っているのでした。カムパネルラが「あれとうもろこしだねえ」とジョバンニに云いましたけれどもジョバンニはどうしても気持がなおりませんでしたからただぶっきり棒に野原を见たまま「そうだろう。」と答えました。そのとき汽车はだんだんしずかになっていくつかのシグナルとてんてつ器の灯を过ぎ小さな停车场にとまりました。
その正面の青じろい时计はかっきり第二时を示しその振子(ふりこ)は风もなくなり汽车もうごかずしずかなしずかな野原のなかにカチッカチッと正しく时を刻んで行くのでした。
そしてまったくその振子の音のたえまを远くの远くの野原のはてから、かすかなかすかな旋律(せんりつ)が糸のように流れて来るのでした。「新世界交响楽(こうきょうがく)だわ。」姉がひとりごとのようにこっちを见ながらそっと云いました。全くもう车の中ではあの黒服の丈高(たけたか)い青年も谁(たれ)もみんなやさしい梦(ゆめ)を见ているのでした。
(こんなしずかないいとこで仆はどうしてもっと愉快(ゆかい)になれないだろう。どうしてこんなにひとりさびしいのだろう。けれどもカムパネルラなんかあんまりひどい、仆といっしょに汽车に乗っていながらまるであんな女の子とばかり谈(はな)しているんだもの。仆はほんとうにつらい。)ジョバンニはまた両手で顔を半分かくすようにして向うの窓のそとを见つめていました。すきとおった硝子(ガラス)のような笛が鸣って汽车はしずかに动き出し、カムパネルラもさびしそうに星めぐりの口笛を吹きました。
「ええ、ええ、もうこの辺はひどい高原ですから。」うしろの方で谁(たれ)かとしよりらしい人のいま眼(め)がさめたという风ではきはき谈している声がしました。
「とうもろこしだって棒で二尺も孔(あな)をあけておいてそこへ播(ま)かないと生えないんです。」
「そうですか。川まではよほどありましょうかねえ、」
「ええええ河までは二千尺から六千尺あります。もうまるでひどい峡谷(きょうこく)になっているんです。」
そうそうここはコロラドの高原じゃなかったろうか、ジョバンニは思わずそう思いました。カムパネルラはまださびしそうにひとり口笛を吹き、女の子はまるで绢で包んだ苹果(りんご)のような顔いろをしてジョバンニの见る方を见ているのでした。突然(とつぜん)とうもろこしがなくなって巨(おお)きな黒い野原がいっぱいにひらけました。新世界交响楽はいよいよはっきり地平线のはてから涌(わ)きそのまっ黒な野原のなかを一人のインデアンが白い鸟の羽根を头につけたくさんの石を腕(うで)と胸にかざり小さな弓に矢を番(つが)えて一目散(いちもくさん)に汽车を追って来るのでした。
「あら、インデアンですよ。インデアンですよ。ごらんなさい。」
黒服の青年も眼をさましました。ジョバンニもカムパネルラも立ちあがりました。
「走って来るわ、あら、走って来るわ。追いかけているんでしょう。」
「いいえ、汽车を追ってるんじゃないんですよ。猟(りょう)をするか踊(おど)るかしてるんですよ。」青年はいまどこに居るか忘れたという风にポケットに手を入れて立ちながら云いました。
まったくインデアンは半分は踊っているようでした。第一かけるにしても足のふみようがもっと経済もとれ本気にもなれそうでした。にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ倒(たお)れるようになりインデアンはぴたっと立ちどまってすばやく弓を空にひきました。そこから一羽の鹤(つる)がふらふらと落ちて来てまた走り出したインデアンの大きくひろげた両手に落ちこみました。インデアンはうれしそうに立ってわらいました。そしてその鹤をもってこっちを见ている影(かげ)ももうどんどん小さく远くなり电しんばしらの碍子(がいし)がきらっきらっと続いて二つばかり光ってまたとうもろこしの林になってしまいました。こっち侧の窓を见ますと汽车はほんとうに高い高い崖(がけ)の上を走っていてその谷の底には川がやっぱり幅(はば)ひろく明るく流れていたのです。
「ええ、もうこの辺から下りです。何せこんどは一ぺんにあの水面までおりて行くんですから容易じゃありません。この倾斜(けいしゃ)があるもんですから汽车は决して向うからこっちへは来ないんです。そら、もうだんだん早くなったでしょう。」さっきの老人らしい声が云いました。
どんどんどんどん汽车は降りて行きました。崖のはじに鉄道がかかるときは川が明るく下にのぞけたのです。ジョバンニはだんだんこころもちが明るくなって来ました。汽车が小さな小屋の前を通ってその前にしょんぼりひとりの子供が立ってこっちを见ているときなどは思わずほうと叫びました。
どんどんどんどん汽车は走って行きました。室中(へやじゅう)のひとたちは半分うしろの方へ倒れるようになりながら腰挂(こしかけ)にしっかりしがみついていました。ジョバンニは思わずカムパネルラとわらいました。もうそして天の川は汽车のすぐ横手をいままでよほど激(はげ)しく流れて来たらしくときどきちらちら光ってながれているのでした。うすあかい河原(かわら)なでしこの花があちこち咲いていました。汽车はようやく落ち着いたようにゆっくりと走っていました。
向うとこっちの岸に星のかたちとつるはしを书いた旗がたっていました。
「あれ何の旗だろうね。」ジョバンニがやっとものを云いました。
「さあ、わからないねえ、地図にもないんだもの。鉄の舟がおいてあるねえ。」
「ああ。」
「桥を架(か)けるとこじゃないんでしょうか。」女の子が云いました。
「あああれ工兵の旗だねえ。架桥(かきょう)演习をしてるんだ。けれど兵队のかたちが见えないねえ。」
その时向う岸ちかくの少し下流の方で见えない天の川の水がぎらっと光って柱のように高くはねあがりどぉと烈(はげ)しい音がしました。
「発破(はっぱ)だよ、発破だよ。」カムパネルラはこおどりしました。
その柱のようになった水は见えなくなり大きな鲑(さけ)や鳟(ます)がきらっきらっと白く腹を光らせて空中に抛(ほう)り出されて円い轮を描いてまた水に落ちました。ジョバンニはもうはねあがりたいくらい気持が軽くなって云いました。
「空の工兵大队だ。どうだ、鳟やなんかがまるでこんなになってはねあげられたねえ。仆こんな愉快な旅はしたことない。いいねえ。」
「あの鳟なら近くで见たらこれくらいあるねえ、たくさんさかな居るんだな、この水の中に。」
「小さなお鱼もいるんでしょうか。」女の子が谈(はなし)につり込(こ)まれて云いました。
「居るんでしょう。大きなのが居るんだから小さいのもいるんでしょう。けれど远くだからいま小さいの见えなかったねえ。」ジョバンニはもうすっかり机嫌(きげん)が直って面白(おもしろ)そうにわらって女の子に答えました。
「あれきっと双子(ふたご)のお星さまのお宫だよ。」男の子がいきなり窓の外をさして叫(さけ)びました。
右手の低い丘(おか)の上に小さな水晶(すいしょう)ででもこさえたような二つのお宫がならんで立っていました。
「双子のお星さまのお宫って何だい。」
「あたし前になんべんもお母さんから聴(き)いたわ。ちゃんと小さな水晶のお宫で二つならんでいるからきっとそうだわ。」
「はなしてごらん。双子のお星さまが何したっての。」
「ぼくも知ってらい。双子のお星さまが野原へ游びにでてからすと喧哗(けんか)したんだろう。」
「そうじゃないわよ。あのね、天の川の岸にね、おっかさんお话なすったわ、……」
「それから彗星(ほうきぼし)がギーギーフーギーギーフーて云って来たねえ。」
「いやだわたあちゃんそうじゃないわよ。それはべつの方だわ。」
「するとあすこにいま笛(ふえ)を吹(ふ)いて居るんだろうか。」
「いま海へ行ってらあ。」
「いけないわよ。もう海からあがっていらっしゃったのよ。」
「そうそう。ぼく知ってらあ、ぼくおはなししよう。」
川の向う岸が俄(にわ)かに赤くなりました。杨(やなぎ)の木や何かもまっ黒にすかし出され见えない天の川の波もときどきちらちら针のように赤く光りました。まったく向う岸の野原に大きなまっ赤な火が燃されその黒いけむりは高く桔梗(ききょう)いろのつめたそうな天をも焦(こ)がしそうでした。ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔(よ)ったようになってその火は燃えているのでした。
「あれは何の火だろう。あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」ジョバンニが云(い)いました。
「蝎(さそり)の火だな。」カムパネルラが又(また)地図と首っ引きして答えました。
「あら、蝎の火のことならあたし知ってるわ。」
「蝎の火ってなんだい。」ジョバンニがききました。
「蝎がやけて死んだのよ。その火がいまでも燃えてるってあたし何べんもお父さんから聴いたわ。」
「蝎って、虫だろう。」
「ええ、蝎は虫よ。だけどいい虫だわ。」
「蝎いい虫じゃないよ。仆博物馆でアルコールにつけてあるの见た。尾にこんなかぎがあってそれで螫(さ)されると死ぬって先生が云ったよ。」
「そうよ。だけどいい虫だわ、お父さん斯(こ)う云ったのよ。むかしのバルドラの野原に一ぴきの蝎がいて小さな虫やなんか杀してたべて生きていたんですって。するとある日いたちに见附(みつ)かって食べられそうになったんですって。さそりは一生けん命遁(に)げて遁げたけどとうとういたちに押(おさ)えられそうになったわ、そのときいきなり前に井戸があってその中に落ちてしまったわ、もうどうしてもあがられないでさそりは溺(おぼ)れはじめたのよ。そのときさそりは斯う云ってお祈(いの)りしたというの、
ああ、わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生けん命にげた。それでもとうとうこんなになってしまった。ああなんにもあてにならない。どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちに呉(く)れてやらなかったろう。そしたらいたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸(さいわい)のために私のからだをおつかい下さい。って云ったというの。そしたらいつか蝎はじぶんのからだがまっ赤なうつくしい火になって燃えてよるのやみを照らしているのを见たって。いまでも燃えてるってお父さん仰(おっしゃ)ったわ。ほんとうにあの火それだわ。」
「そうだ。见たまえ。そこらの三角标はちょうどさそりの形にならんでいるよ。」
ジョバンニはまったくその大きな火の向うに三つの三角标がちょうどさそりの腕(うで)のようにこっちに五つの三角标がさそりの尾やかぎのようにならんでいるのを见ました。そしてほんとうにそのまっ赤なうつくしいさそりの火は音なくあかるくあかるく燃えたのです。
その火がだんだんうしろの方になるにつれてみんなは何とも云えずにぎやかなさまざまの楽の音(ね)や草花の匂(におい)のようなもの口笛や人々のざわざわ云う声やらを闻きました。それはもうじきちかくに町か何かがあってそこにお祭でもあるというような気がするのでした。
「ケンタウル露(つゆ)をふらせ。」いきなりいままで睡(ねむ)っていたジョバンニのとなりの男の子が向うの窓を见ながら叫んでいました。
ああそこにはクリスマストリイのようにまっ青な唐桧(とうひ)かもみの木がたってその中にはたくさんのたくさんの豆电灯(まめでんとう)がまるで千の蛍(ほたる)でも集ったようについていました。
「ああ、そうだ、今夜ケンタウル祭だねえ。」
「ああ、ここはケンタウルの村だよ。」カムパネルラがすぐ云いました。〔以下原稿一枚?なし〕
「ボール投げなら仆(ぼく)决してはずさない。」
男の子が大威张(おおいば)りで云いました。
「もうじきサウザンクロスです。おりる支度(したく)をして下さい。」青年がみんなに云いました。
「仆も少し汽车へ乗ってるんだよ。」男の子が云いました。カムパネルラのとなりの女の子はそわそわ立って支度をはじめましたけれどもやっぱりジョバンニたちとわかれたくないようなようすでした。
「ここでおりなけぁいけないのです。」青年はきちっと口を结んで男の子を见おろしながら云いました。
「厌(いや)だい。仆もう少し汽车へ乗ってから行くんだい。」
ジョバンニがこらえ兼ねて云いました。
「仆たちと一绪(いっしょ)に乗って行こう。仆たちどこまでだって行ける切符(きっぷ)持ってるんだ。」
「だけどあたしたちもうここで降りなけぁいけないのよ。ここ天上へ行くとこなんだから。」女の子がさびしそうに云いました。
「天上へなんか行かなくたっていいじゃないか。ぼくたちここで天上よりももっといいとこをこさえなけぁいけないって仆の先生が云ったよ。」
「だっておっ母さんも行ってらっしゃるしそれに神さまが仰(お)っしゃるんだわ。」
「そんな神さまうその神さまだい。」
「あなたの神さまうその神さまよ。」
「そうじゃないよ。」
「あなたの神さまってどんな神さまですか。」青年は笑いながら云いました。
「ぼくほんとうはよく知りません、けれどもそんなんでなしにほんとうのたった一人の神さまです。」
「ほんとうの神さまはもちろんたった一人です。」
「ああ、そんなんでなしにたったひとりのほんとうのほんとうの神さまです。」
「だからそうじゃありませんか。わたくしはあなた方がいまにそのほんとうの神さまの前にわたくしたちとお会いになることを祈ります。」青年はつつましく両手を组みました。女の子もちょうどその通りにしました。みんなほんとうに别れが惜(お)しそうでその顔いろも少し青ざめて见えました。ジョバンニはあぶなく声をあげて泣き出そうとしました。
「さあもう支度はいいんですか。じきサウザンクロスですから。」
ああそのときでした。见えない天の川のずうっと川下に青や橙(だいだい)やもうあらゆる光でちりばめられた十字架(じゅうじか)がまるで一本の木という风に川の中から立ってかがやきその上には青じろい云がまるい环(わ)になって後光のようにかかっているのでした。汽车の中がまるでざわざわしました。みんなあの北の十字のときのようにまっすぐに立ってお祈りをはじめました。あっちにもこっちにも子供が瓜(うり)に飞びついたときのようなよろこびの声や何とも云いようない深いつつましいためいきの音ばかりきこえました。そしてだんだん十字架は窓の正面になりあの苹果(りんご)の肉のような青じろい环の云もゆるやかにゆるやかに绕(めぐ)っているのが见えました。
「ハルレヤハルレヤ。」明るくたのしくみんなの声はひびきみんなはそのそらの远くからつめたいそらの远くからすきとおった何とも云えずさわやかなラッパの声をききました。そしてたくさんのシグナルや电灯の灯(あかり)のなかを汽车はだんだんゆるやかになりとうとう十字架のちょうどま向いに行ってすっかりとまりました。
「さあ、下りるんですよ。」青年は男の子の手をひきだんだん向うの出口の方へ歩き出しました。
「じゃさよなら。」女の子がふりかえって二人に云いました。
「さよなら。」ジョバンニはまるで泣き出したいのをこらえて怒(おこ)ったようにぶっきり棒に云いました。女の子はいかにもつらそうに眼(め)を大きくしても一度こっちをふりかえってそれからあとはもうだまって出て行ってしまいました。汽车の中はもう半分以上も空いてしまい俄(にわ)かにがらんとしてさびしくなり风がいっぱいに吹(ふ)き込(こ)みました。
そして见ているとみんなはつつましく列を组んであの十字架の前の天の川のなぎさにひざまずいていました。そしてその见えない天の川の水をわたってひとりの神々(こうごう)しい白いきものの人が手をのばしてこっちへ来るのを二人は见ました。けれどもそのときはもう硝子(ガラス)の呼子(よびこ)は鸣らされ汽车はうごき出しと思ううちに银いろの雾(きり)が川下の方からすうっと流れて来てもうそっちは何も见えなくなりました。ただたくさんのくるみの木が叶をさんさんと光らしてその雾の中に立ち黄金(きん)の円光をもった电気栗鼠(りす)が可爱(かあい)い顔をその中からちらちらのぞいているだけでした。
そのときすうっと雾がはれかかりました。どこかへ行く街道らしく小さな电灯の一列についた通りがありました。それはしばらく线路に沿って进んでいました。そして二人がそのあかしの前を通って行くときはその小さな豆いろの火はちょうど挨拶(あいさつ)でもするようにぽかっと消え二人が过ぎて行くときまた点(つ)くのでした。
ふりかえって见るとさっきの十字架はすっかり小さくなってしまいほんとうにもうそのまま胸にも吊(つる)されそうになり、さっきの女の子や青年たちがその前の白い渚(なぎさ)にまだひざまずいているのかそれともどこか方角もわからないその天上へ行ったのかぼんやりして见分けられませんでした。
ジョバンニはああと深く息しました。
「カムパネルラ、また仆たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一绪に行こう。仆はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸(さいわい)のためならば仆のからだなんか百ぺん灼(や)いてもかまわない。」
「うん。仆だってそうだ。」カムパネルラの眼にはきれいな涙(なみだ)がうかんでいました。
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」ジョバンニが云いました。
「仆わからない。」カムパネルラがぼんやり云いました。
「仆たちしっかりやろうねえ。」ジョバンニが胸いっぱい新らしい力が涌(わ)くようにふうと息をしながら云いました。
「あ、あすこ石炭袋(ぶくろ)だよ。そらの孔(あな)だよ。」カムパネルラが少しそっちを避(さ)けるようにしながら天の川のひととこを指さしました。ジョバンニはそっちを见てまるでぎくっとしてしまいました。天の川の一とこに大きなまっくらな孔がどほんとあいているのです。その底がどれほど深いかその奥(おく)に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも见えずただ眼がしんしんと痛むのでした。ジョバンニが云いました。
「仆もうあんな大きな暗(やみ)の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも仆たち一绪に进んで行こう。」
「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集ってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」カムパネルラは俄(にわ)かに窓の远くに见えるきれいな野原を指して叫(さけ)びました。
ジョバンニもそっちを见ましたけれどもそこはぼんやり白くけむっているばかりどうしてもカムパネルラが云ったように思われませんでした。何とも云えずさびしい気がしてぼんやりそっちを见ていましたら向うの河岸に二本の电信ばしらが丁度両方から腕(うで)を组んだように赤い腕木をつらねて立っていました。
「カムパネルラ、仆たち一绪に行こうねえ。」ジョバンニが斯(こ)う云いながらふりかえって见ましたらそのいままでカムパネルラの座(すわ)っていた席にもうカムパネルラの形は见えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。ジョバンニはまるで鉄炮丸(てっぽうだま)のように立ちあがりました。そして谁(たれ)にも闻えないように窓の外へからだを乗り出して力いっぱいはげしく胸をうって叫びそれからもう咽喉(のど)いっぱい泣きだしました。もうそこらが一ぺんにまっくらになったように思いました。
ジョバンニは眼をひらきました。もとの丘(おか)の草の中につかれてねむっていたのでした。胸は何だかおかしく热(ほて)り頬(ほほ)にはつめたい涙がながれていました。
ジョバンニはばねのようにはね起きました。町はすっかりさっきの通りに下でたくさんの灯を缀(つづ)ってはいましたがその光はなんだかさっきよりは热したという风でした。そしてたったいま梦(ゆめ)であるいた天の川もやっぱりさっきの通りに白くぼんやりかかりまっ黒な南の地平线の上では殊(こと)にけむったようになってその右には蠍座(さそりざ)の赤い星がうつくしくきらめき、そらぜんたいの位置はそんなに変ってもいないようでした。
ジョバンニは一さんに丘を走って下りました。まだ夕ごはんをたべないで待っているお母さんのことが胸いっぱいに思いだされたのです。どんどん黒い松(まつ)の林の中を通ってそれからほの白い牧场の栅(さく)をまわってさっきの入口から暗い牛舎の前へまた来ました。そこには谁かがいま帰ったらしくさっきなかった一つの车が何かの樽(たる)を二つ乗っけて置いてありました。
「今晩は、」ジョバンニは叫びました。
「はい。」白い太いずぼんをはいた人がすぐ出て来て立ちました。
「何のご用ですか。」
「今日牛乳がぼくのところへ来なかったのですが」
「あ済みませんでした。」その人はすぐ奥へ行って一本の牛乳瓶(ぎゅうにゅうびん)をもって来てジョバンニに渡(わた)しながらまた云いました。
「ほんとうに、済みませんでした。今日はひるすぎうっかりしてこうしの棚をあけて置いたもんですから大将早速亲牛のところへ行って半分ばかり呑んでしまいましてね……」その人はわらいました。
「そうですか。ではいただいて行きます。」
「ええ、どうも済みませんでした。」
「いいえ。」
ジョバンニはまだ热い乳の瓶を両方のてのひらで包むようにもって牧场の栅を出ました。
そしてしばらく木のある町を通って大通りへ出てまたしばらく行きますとみちは十文字になってその右手の方、通りのはずれにさっきカムパネルラたちのあかりを流しに行った川へかかった大きな桥のやぐらが夜のそらにぼんやり立っていました。
ところがその十字になった町かどや店の前に女たちが七八人ぐらいずつ集って桥の方を见ながら何かひそひそ谈(はな)しているのです。それから桥の上にもいろいろなあかりがいっぱいなのでした。
ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思いました。そしていきなり近くの人たちへ
「何かあったんですか。」と叫ぶようにききました。
「こどもが水へ落ちたんですよ。」一人が云いますとその人たちは一斉(いっせい)にジョバンニの方を见ました。ジョバンニはまるで梦中で桥の方へ走りました。桥の上は人でいっぱいで河が见えませんでした。白い服を着た巡査(じゅんさ)も出ていました。
ジョバンニは桥の袂(たもと)から飞ぶように下の広い河原へおりました。
その河原の水际(みずぎわ)に沿ってたくさんのあかりがせわしくのぼったり下ったりしていました。向う岸の暗いどてにも火が七つ八つうごいていました。そのまん中をもう乌瓜(からすうり)のあかりもない川が、わずかに音をたてて灰いろにしずかに流れていたのでした。
河原のいちばん下流の方へ州(す)のようになって出たところに人の集りがくっきりまっ黒に立っていました。ジョバンニはどんどんそっちへ走りました。するとジョバンニはいきなりさっきカムパネルラといっしょだったマルソに会いました。マルソがジョバンニに走り寄ってきました。
「ジョバンニ、カムパネルラが川へはいったよ。」
「どうして、いつ。」
「ザネリがね、舟の上から乌うりのあかりを水の流れる方へ押(お)してやろうとしたんだ。そのとき舟がゆれたもんだから水へ落っこったろう。するとカムパネルラがすぐ飞びこんだんだ。そしてザネリを舟の方へ押してよこした。ザネリはカトウにつかまった。けれどもあとカムパネルラが见えないんだ。」
「みんな探してるんだろう。」
「ああすぐみんな来た。カムパネルラのお父さんも来た。けれども见附(みつ)からないんだ。ザネリはうちへ连れられてった。」
ジョバンニはみんなの居るそっちの方へ行きました。そこに学生たち町の人たちに囲まれて青じろい尖(とが)ったあごをしたカムパネルラのお父さんが黒い服を着てまっすぐに立って右手に持った时计をじっと见つめていたのです。
みんなもじっと河を见ていました。谁(たれ)も一言も物を云う人もありませんでした。ジョバンニはわくわくわくわく足がふるえました。鱼をとるときのアセチレンランプがたくさんせわしく行ったり来たりして黒い川の水はちらちら小さな波をたてて流れているのが见えるのでした。
下流の方は川はば一ぱい银河が巨(おお)きく写ってまるで水のないそのままのそらのように见えました。
ジョバンニはそのカムパネルラはもうあの银河のはずれにしかいないというような気がしてしかたなかったのです。
けれどもみんなはまだ、どこかの波の间から、
「ぼくずいぶん泳いだぞ。」と云いながらカムパネルラが出て来るか或(ある)いはカムパネルラがどこかの人の知らない洲にでも着いて立っていて谁かの来るのを待っているかというような気がして仕方ないらしいのでした。けれども俄(にわ)かにカムパネルラのお父さんがきっぱり云いました。
「もう駄目(だめ)です。落ちてから四十五分たちましたから。」
ジョバンニは思わずかけよって博士の前に立って、ぼくはカムパネルラの行った方を知っていますぼくはカムパネルラといっしょに歩いていたのですと云おうとしましたがもうのどがつまって何とも云えませんでした。すると博士はジョバンニが挨拶(あいさつ)に来たとでも思ったものですか、しばらくしげしげジョバンニを见ていましたが
「あなたはジョバンニさんでしたね。どうも今晩はありがとう。」と叮(てい)ねいに云いました。
ジョバンニは何も云えずにただおじぎをしました。
「あなたのお父さんはもう帰っていますか。」博士は坚(かた)く时计を握(にぎ)ったまままたききました。
「いいえ。」ジョバンニはかすかに头をふりました。
「どうしたのかなあ。ぼくには一昨日(おととい)大へん元気な便りがあったんだが。今日あたりもう着くころなんだが。船が遅(おく)れたんだな。ジョバンニさん。あした放课後みなさんとうちへ游びに来てくださいね。」
そう云いながら博士はまた川下の银河のいっぱいにうつった方へじっと眼を送りました。
ジョバンニはもういろいろなことで胸がいっぱいでなんにも云えずに博士の前をはなれて早くお母さんに牛乳を持って行ってお父さんの帰ることを知らせようと思うともう一目散に河原を街の方へ走りました。
九 乔伴尼的车票
“这儿是白鸟区的尽头了。看吧!那就是有名的艾伯塔雷欧观测站。”
窗外,四栋庞大黑色的建筑物,矗立在宛如满天烟火的银河中央。其中一栋平房屋顶上,有两个用蓝宝石和黄玉做成的很大的透明球体,正在静静地绕着圈子。黄球渐渐转到后面时,比较小的青球会往前转过来,不一会儿,两个球体的边缘便重迭在一起,形成一面美丽的绿色双面凸透镜。凸透镜中央逐渐鼓胀,最后青球转到黄球的正面,就变成中央是绿色,外围是黄色的明亮光环。接着两个球体又缓缓地错开,再度形成先前的凸透镜,然后完全分离,蓝宝石球体转到后面,黄玉球体转到前面来,跟刚刚那样。黑色的观测站,四周都是无声无影的银河河水,它们像是在熟睡般,只是静静地亘卧在那里。
“那是测量水速的仪器。河水也……”捕鸟人还未说完,身旁就响起一个声音:
“请让我看一下车票。”
一位戴着红帽子,个子很高的乘务员,竟不知在何时站立在他们三人座席的旁边。捕鸟人默不作声地从口袋掏出一张小纸片。乘务员随意瞟了一下,立即移开眼光,向乔伴尼他们伸出手屈了屈手指,像是在问“你们呢?”。
“哦……”乔伴尼一下子慌乱了,不知该如何是好。康潘内鲁拉却若无其事地掏出一张灰色的小车票。乔伴尼更慌了,心想,或许外套口袋中有车票,便伸手去掏,果然摸到一张折迭着,不知是什么的大纸片。虽然心中有点狐疑,还是急忙掏出来,原来是一张折成四分之一,明信片大的绿色纸张。因为乘务员已经将手伸出来了,乔伴尼只能不管后果地将绿色纸张递给对方,没想到乘务员竟然站直了身子,恭谨地摊开来看。乘务员边看边不时整整衣襟、理理钮扣的,守灯塔的男人也从下面凑过头来热心地瞧着。乔伴尼想起那确实好像是证明书之类的文件,心中不觉感到温热起来。
“这是从三度空间带来的吗?”乘务员问道。
“我也不清楚。”乔伴尼知道已经过关,安心地仰头望着乘务员,吃吃笑着。
“可以。下一个第三时时,我们就抵达南十字星。”乘务员将纸张还给乔伴尼,走开了。
康潘内鲁拉像是等不及想瞧瞧纸张到底是什么东西似的,急急忙忙地凑过头来。其实乔伴尼自己也很想看看。可是,纸面上满是黑色蔓藤花纹,花纹中印刷有十个奇怪的字,看着看着,竟好像会被吸进去一般。捕鸟人在一旁瞄了一眼,惊慌失措地大叫:
“哎呀,不得了!这是能够到真正的天国的车票。不只是天国,到哪儿都能通行无阻。原来你们有这种车票,不要说是这辆不完全的幻想第四次银河列车了,什么地方都可去呢。你们真是了不起。”
“我不大清楚呀。”乔伴尼满脸通红地回答,再迭起纸张,放进口袋内。因为有点不好意思,所以和康潘内鲁拉两人一起眺望着窗外。隐约中,他们仍能察觉到捕鸟人不时瞄过来的眼光,那眼光好像依旧在称谓着:你们真是了不起。
“再过不久就是天鹰车站了。”康潘内鲁拉对比着地图与对岸并排着的三个青白色小三角标。
不知怎地,乔伴尼突然很同情身旁的捕鸟人。他想起刚才捕鸟人因为捕到鹭鸶而欢天喜地的样子,又想起捕鸟人用白布包裹着鹭鸶、瞥见人家的车票之后再赶忙奉承的样子,竟忍不住想将自己所有的东西,不管是吃的还是别的,通通送给这位萍水相逢的捕鸟人。只要这位捕鸟人能够获得真正的幸福,他甚至可以站在那个发光的银河河滩上,连续站个一百年替代他捕鸟。想到这些,乔伴尼再也忍不住了。他想问捕鸟人,你真正想要什么东西呢?可是又觉得这样问未免太唐突了,正在犹豫不决地回过头时,却发现捕鸟人已经不在座位上了。连行李架上的白包袱也不见了。难道又在窗外叉开双脚、仰望着天空,准备捕捉鹭鸶?乔伴尼急忙望向窗外,只见窗外遍地都是闪烁的沙石,以及飘荡的芒草,看不见捕鸟人那宽厚的背影与尖帽子。
“他跑到哪儿去了?”康潘内鲁拉也恍惚地说道。
“到哪儿去了?我们到底能在哪儿跟他重逢呢?我真后悔没跟他多讲一些话。”
“啊,我也是。”
“因为我一直认为他有点烦,所以我现在很难过。”乔伴尼发觉自己第一次有这种奇妙的感觉,而且也从来不曾说过这种话的。
“好像有苹果的味道。难道是因为我正在想着苹果?”康潘内鲁拉不可思议地环视着四周。
“真的是苹果的味道。还有野玫瑰的味道。”乔伴尼也浏览着四周,发现味道是从窗外传进来的。可是乔伴尼又心想,现在是秋天,怎么可能会有野玫瑰的花香呢?
冷不防眼前竟然出现一个头发乌黑、六岁左右的小男孩,他身上穿着一件没扣上钮扣的红色外套,一脸吃惊的表情,赤着脚站在那儿不停地发抖。另外有一位西装笔挺的高大青年,像一株被劲风猛烈吹打的榉树,紧紧牵着小男孩的手,挺立在他身旁。
“咦?这是什么地方?很漂亮呢。”青年身后又有一个十二岁左右的棕眼可爱小女孩,身上穿着一件黑色外套,正抓住青年的手腕惊奇眺望着窗外。
“哦,这里是兰开夏。不对,是康乃狄克州。也不对,啊,我们是来到天上了。我们要到天国去了。你们看,那个标志正是天国的标志。我们不用再害怕什么了。我们已经得到天主的召唤了。”黑衣服的青年兴高采烈地回小女孩。可是不知为何,他的额头却紧锁着很深的皱纹,而且看上去像是疲惫不堪的样子,却仍勉强堆起笑容让小男孩坐到乔伴尼的身旁。
接着,再温柔地指指康潘内鲁拉旁边的位子,示意小女孩坐下。小女孩乖顺地坐下后,双手很有规矩地交迭在一起。
“我要到姊姊那儿去呢!”男孩一坐下,便向坐到守灯塔男人对面,表情有点怪的青年说道。青年只是以无比悲伤的神色,默默凝视着男孩那湿漉漉的鬈发。女孩则是突然用手掌埋住脸庞,抽抽搭搭地哭泣起来。
“爸爸和菊代姊姊还有许多工作要做。不过他们不要多久就会跟来的。倒是妈妈一定等了很久了吧。妈妈一定在想着,我心肝宝贝的小正现在正在唱着什么歌呢?下雪天的清晨,是不是和大家手牵手在院子绕着灌木丛玩耍呢?妈妈一定等得非常心焦。我们赶快去妈妈那儿让她看看你们吧。”
“嗯,不过我要是没上那艘船的话,不知该有多好。”
“是啊,不过,你们看,怎么样?多壮观的银河!是不是?那年整个夏天,我们睡前都会唱着twinkle twinkle little star,那儿就是那时我们从窗外看见的白茫茫银河呀。就在那儿!看!漂亮吧?多明亮啊!”
正在哭泣的姊姊也用手帕擦干眼泪,转头望向窗外。青年像是在教导他们般轻轻解释着:
“我们再也不用悲伤什么了。等我们结束这段美好的旅程之后,我们便可以到上帝身边去了。那儿很明亮,遍地散发着馨香,聚集着很多好人。而且,那些代替我们坐上救生艇的人,一定都会全体获救,再各自回到正在焦急等着孩子们的爸爸身边,妈妈身边,或是自己家的。看,就快到了,我们打起精神一路唱歌去吧!”青年抚摸着男孩湿漉的黑发,安慰着他们,表情也逐渐开朗起来。
“你们是从哪里来的?发生了什么事吗?”守灯塔男人好像有点明白了,向青年问道。青年微微一笑。
“是这样的,轮船撞上冰山沉没了。他们的父亲在两个月前因有急事先行归国,我们是后来才出发的。我是个大学生,也是他们的家教。就在航程第十二天,也正是今天还是昨天吧,轮船撞上冰山,眨眼间便倾斜沉没了。虽然月光微弱地照亮着四周,但是雾气很浓。轮船左舷的所有救生艇都无法使用,旅客们不能全部搭上剩余的救生艇。眼看轮船即将沉没,我拚命大叫,先让孩子们上去吧!附近的人群马上让出一条路,并为孩子们祷告着。可是,我们与救生艇之间,仍是有许多小孩和他们的双亲,我没有勇气推开他们。但是我认为无论如何我也得救这两个孩子,这是我的义务,所以我便伸手想去推开眼前的其它孩子们。可是我又想到用这种方法救他们,不如让我们就这样回到上帝身边,才是他们真正的幸福归宿。不过我又转念一想,算了,让我一个人背负违逆上帝的罪名,先救孩子们要紧。可是观望着眼前的光景,我终于下不了手。许多双亲都只让孩子们搭上救生艇,当妈妈的发疯似地向孩子们送着飞吻,当爸爸的则是直挺挺地立在一旁,硬是忍住心里的悲伤。看得我真是肝肠寸断。轮船分秒不断地在沉没,我总算下定决心,紧紧抱着两人,打算能浮多久就算多久,静待轮船完全沉没。然后不知道是谁抛来一个救生圈,可是手一滑,救生圈被抛到远远的前方。我拚命拆下一段甲板上的木板,和孩子们三人紧紧搂住木板。这时不知从哪里传来(二字空白)号的歌声,众人以不同语言齐声唱了起来。接着一声巨响之后,我们被抛进海中,我感到我们在漩涡中打转,更是加紧搂住孩子们,等我清醒时,我们已经来到这儿了。孩子们的母亲于前年就去世了。我想,救生艇一定获救了。因为当时操桨的都是熟练的水手,立即将救生艇划开了。”
四周传来低沉的祷告声。乔伴尼与康潘内鲁拉也隐隐约约地记起一些被他们遗忘的事情,眼眶逐渐红了起来。
(啊,那个大海,想必是太平洋吧。在那四处流荡着冰山的极北海面上,有人在小船上,冒着烈风与冻僵的潮水、酷寒挑战,拚命地工作着。我真的非常同情他们,也觉得于心不安。为了让他们能够获得真正的幸福,我应该怎么做呢?)乔伴尼垂着头,闷闷不乐地沉思中。
“什么才是真正的幸福,是没人知道的。只要我们朝着正确的目标前进,无论途中会遇上多困苦的事,上高山也好,下陡坡也好,都是接近真正幸福的一步步足迹。”守灯塔男人安慰着青年。
“是的。为了抵达真正幸福的终点,一些中途所经历的种种悲伤,都是上帝的安排。”
青年祈祷般地回答。
此时,那对姐弟也早已累得各自靠在椅背上睡着了。原本打着赤脚的小脚上,不知何时竟然套着一双白色柔软的鞋子。
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