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中日对照宫泽贤治童话《风又三郎》3(日语)

发表时间:2012/2/6 15:41:35 来源:互联网 点击关注微信:关注中大网校微信
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 风の又三郎

宫沢贤治

次の朝、空はよく晴れて谷川はさらさら鸣りました。一郎は途中で嘉助と佐太郎と悦治をさそっていっしょに三郎のうちのほうへ行きました。

学校の少し下流で谷川をわたって、それから岸で杨(やなぎ)の枝をみんなで一本ずつ折って、青い皮をくるくるはいで鞭(むち)をこしらえて手でひゅうひゅう振りながら、上の野原への道をだんだんのぼって行きました。みんなは早くも登りながら息をはあはあしました。

「又三郎ほんとにあそごのわき水まで来て待ぢでるべが。」

「待ぢでるんだ。又三郎うそこがないもな。」

「ああ暑う、风吹げばいいな。」

「どごがらだが风吹いでるぞ。」

「又三郎吹がせでらべも。」

「なんだがお日さんぼやっとして来たな。」

空に少しばかりの白い云が出ました。そしてもうだいぶのぼっていました。谷のみんなの家がずうっと下に见え、一郎のうちの木小屋の屋根が白く光っています。

道が林の中に入り、しばらく道はじめじめして、あたりは见えなくなりました。そしてまもなくみんなは约束のわき水の近くに来ました。するとそこから、

「おうい。みんな来たかい。」と三郎の高く叫ぶ声がしました。

みんなはまるでせかせかと走ってのぼりました。向こうの曲がり角(かど)の所に三郎が小さなくちびるをきっと结んだまま、三人のかけ上って来るのを见ていました。

三人はやっと三郎の前まで来ました。けれどもあんまり息がはあはあしてすぐには何も言えませんでした。嘉助などはあんまりもどかしいもんですから、空へ向いて「ホッホウ。」と叫んで早く息を吐いてしまおうとしました。すると三郎は大きな声で笑いました。

「ずいぶん待ったぞ。それにきょうは雨が降るかもしれないそうだよ。」

「そだら早ぐ行ぐべすさ。おらまんつ水饮んでぐ。」三人は汗をふいてしゃがんで、まっ白な岩からごぼごぼ喷(ふ)きだす冷たい水を何べんもすくってのみました。

「ぼくのうちはここからすぐなんだ。ちょうどあの谷の上あたりなんだ。みんなで帰りに寄ろうねえ。」

「うん。まんつ野原さ行ぐべすさ。」

みんながまたあるきはじめたときわき水は何かを知らせるようにぐうっと鸣り、そこらの木もなんだかざあっと鸣ったようでした。

五人は林のすその薮(やぶ)の间を行ったり岩かけの小さくくずれる所を何べんも通ったりして、もう上の野原の入り口に近くなりました。

みんなはそこまで来ると来たほうからまた西のほうをながめました。

光ったりかげったり几通りにも重なったたくさんの丘の向こうに、川に沿ったほんとうの野原がぼんやり碧(あお)くひろがっているのでした。

「ありゃ、あいづ川だぞ。」

「春日明神(かすがみょうじん)さんの帯のようだな。」三郎が言いました。

「何のようだど。」一郎がききました。

「春日明神さんの帯のようだ。」

「うな神さんの帯见だごとあるが。」

「ぼく北海道で见たよ。」

みんなはなんのことだかわからずだまってしまいました。

ほんとうにそこはもう上の野原の入り口で、きれいに刈られた草の中に一本の大きな栗(くり)の木が立って、その干は根もとの所がまっ黒に焦げて大きな洞(ほら)のようになり、その枝には古い绳(なわ)や、切れたわらじなどがつるしてありました。

「もう少し行ぐづどみんなして草刈ってるぞ。それから马のいるどごもあるぞ。」一郎は言いながら先に立って刈った草のなかの一ぽんみちをぐんぐん歩きました。

三郎はその次に立って、

「ここには熊(くま)いないから马をはなしておいてもいいなあ。」と言って歩きました。

しばらく行くとみちばたの大きな楢(なら)の木の下に、绳で编んだ袋が投げ出してあって、たくさんの草たばがあっちにもこっちにもころがっていました。

せなかに草束をしょった二匹の马が、一郎を见て鼻をぷるぷる鸣らしました。

「兄(あい)な、いるが。兄(あい)な、来たぞ。」一郎は汗をぬぐいながら叫びました。

「おおい。ああい。そこにいろ。今行ぐぞ。」ずうっと向こうのくぼみで、一郎のにいさんの声がしました。

日はぱっと明るくなり、にいさんがそっちの草の中から笑って出て来ました。

「善(ゆ)ぐ来たな。みんなも连れで来たのが。善(ゆ)ぐ来た。戻りに马こ连れでてけろな。きょうあ午(ひる)まがらきっと昙る。おらもう少し草集めて仕舞(しむ)がらな、うなだ游ばばあの土手の中さはいってろ。まだ牧马の马二十匹ばかりはいるがらな。」

にいさんは向こうへ行こうとして、振り向いてまた言いました。

「土手がら外さ出はるなよ。迷ってしまうづどあぶないがらな。午(ひる)まになったらまた来るがら。」

「うん。土手の中にいるがら。」

そして一郎のにいさんは行ってしまいました。

空にはうすい云がすっかりかかり、太阳は白い镜のようになって、云と反対に驰(は)せました。风が出て来てまだ刈っていない草は一面に波を立てます。一郎はさきにたって小さなみちをまっすぐに行くと、まもなくどてになりました。その土手の一とこちぎれたところに二本の丸太の棒を横にわたしてありました。悦治がそれをくぐろうとしますと、嘉助が、

「おらこったなものはずせだぞ。」と言いながら片っぽうのはじをぬいて下におろしましたのでみんなはそれをはね越えて中にはいりました。

向こうの少し小高いところにてかてか光る茶いろの马が七匹ばかり集まって、しっぽをゆるやかにばしゃばしゃふっているのです。

「この马みんな千円以上するづもな。来年がらみんな竞马さも出はるのだづぢゃい。」一郎はそばへ行きながら言いました。

马はみんないままでさびしくってしようなかったというように一郎たちのほうへ寄ってきました。そして鼻づらをずうっとのばして何かほしそうにするのです。

「ははあ、塩をけろづのだな。」みんなは言いながら手を出して马になめさせたりしましたが、三郎だけは马になれていないらしく気味わるそうに手をポケットへ入れてしまいました。

「わあ、又三郎马おっかながるぢゃい。」と悦治が言いました。すると三郎は、

「こわくなんかないやい。」と言いながらすぐポケットの手を马の鼻づらへのばしましたが、马が首をのばして舌をべろりと出すと、さっと顔いろを変えてすばやくまた手をポケットへ入れてしまいました。

「わあい、又三郎马おっかながるぢゃい。」悦治がまた言いました。すると三郎はすっかり顔を赤くしてしばらくもじもじしていましたが、

「そんなら、みんなで竞马やるか。」と言いました。

竞马ってどうするのかとみんな思いました。

すると三郎は、

「ぼく竞马何べんも见たぞ。けれどもこの马みんな鞍(くら)がないから乗れないや。みんなで一匹ずつ马を追って、はじめに向こうの、そら、あの大きな木のところに着いたものを一等にしよう。」

「そいづおもしろいな。」嘉助が言いました。

「しからえるぞ。牧夫に见つけらえでがら。」

「大丈夫だよ。竞马に出る马なんか练习をしていないといけないんだい。」三郎が言いました。

「よしおらこの马だぞ。」

「おらこの马だ。」

「そんならぼくはこの马でもいいや。」みんなは杨(やなぎ)の枝や萱(かや)の穂でしゅうと言いながら马を軽く打ちました。

ところが马はちっともびくともしませんでした。やはり下へ首をたれて草をかいだり、首をのばしてそこらのけしきをもっとよく见るというようにしているのです。

一郎がそこで両手をぴしゃんと打ち合わせて、だあ、と言いました。

するとにわかに七匹ともまるでたてがみをそろえてかけ出したのです。

「うまあい。」嘉助ははね上がって走りました。けれどもそれはどうも竞马にはならないのでした。

第一、马はどこまでも顔をならべて走るのでしたし、それにそんなに竞马するくらい早く走るのでもなかったのです。それでもみんなはおもしろがって、だあだと言いながら一生けん命そのあとを追いました。

马はすこし行くと立ちどまりそうになりました。みんなもすこしはあはあしましたが、こらえてまた马を追いました。するといつか马はぐるっとさっきの小高いところをまわって、さっき五人ではいって来たどての切れた所へ来たのです。

「あ、马出はる、马出はる。押えろ 押えろ。」一郎はまっ青(さお)になって叫びました。じっさい马はどての外へ出たのらしいのでした。どんどん走って、もうさっきの丸太の棒を越えそうになりました。

一郎はまるであわてて、

「どう、どう、どうどう。」と言いながら一生けん命走って行って、やっとそこへ着いてまるでころぶようにしながら手をひろげたときは、そのときはもう二匹は栅(さく)の外へ出ていたのです。

「早ぐ来て押えろ。早ぐ来て。」一郎は息も切れるように叫びながら丸太棒をもとのようにしました。

四人は走って行って急いで丸太をくぐって外へ出ますと、二匹の马はもう走るでもなく、どての外に立って草を口で引っぱって抜くようにしています。

「そろそろど押えろよ。そろそろど。」と言いながら一郎は一ぴきのくつわについた札のところをしっかり押えました。嘉助と三郎がもう一匹を押えようとそばへ寄りますと、马はまるでおどろいたようにどてへ沿って一目散に南のほうへ走ってしまいました。

「兄(あい)な、马あ逃げる、马あ逃げる。兄(あい)な、马逃げる。」とうしろで一郎が一生けん命叫んでいます。三郎と嘉助は一生けん命马を追いました。

ところが马はもう今度こそほんとうに逃げるつもりらしかったのです。まるで丈(たけ)ぐらいある草をわけて高みになったり低くなったり、どこまでも走りました。

嘉助はもう足がしびれてしまって、どこをどう走っているのかわからなくなりました。

それからまわりがまっ苍(さお)になって、ぐるぐる回り、とうとう深い草の中に倒れてしまいました。马の赤いたてがみと、あとを追って行く三郎の白いシャッポが终わりにちらっと见えました。

嘉助は、仰向けになって空を见ました。空がまっ白に光って、ぐるぐる回り、そのこちらを薄いねずみ色の云が、速く速く走っています。そしてカンカン鸣っています。

嘉助はやっと起き上がって、せかせか息しながら马の行ったほうに歩き出しました。草の中には、今马と三郎が通った迹らしく、かすかな道のようなものがありました。嘉助は笑いました。そして、(ふん、なあに马どこかでこわくなってのっこり立ってるさ、)と思いました。

そこで嘉助は、一生悬命それをつけて行きました。

ところがその迹のようなものは、まだ百歩も行かないうちに、おとこえしや、すてきに背の高いあざみの中で、二つにも三つにも分かれてしまって、どれがどれやらいっこうわからなくなってしまいました。

嘉助は「おうい。」と叫びました。

「おう。」とどこかで三郎が叫んでいるようです。思い切って、そのまん中のを进みました。

けれどもそれも、时々切れたり、马の歩かないような急な所を横ざまに过ぎたりするのでした。

空はたいへん暗く重くなり、まわりがぼうっとかすんで来ました。冷たい风が、草を渡りはじめ、もう云や雾が切れ切れになって目の前をぐんぐん通り过ぎて行きました。

(ああ、こいつは悪くなって来た。みんな悪いことはこれから集(たが)ってやって来るのだ。)と嘉助は思いました。全くそのとおり、にわかに马の通った迹は草の中でなくなってしまいました。

(ああ、悪くなった、悪くなった。)嘉助は胸をどきどきさせました。

草がからだを曲げて、パチパチ言ったり、さらさら鸣ったりしました。雾がことに滋(しげ)くなって、着物はすっかりしめってしまいました。

嘉助は咽喉(のど)いっぱい叫びました。

「一郎、一郎、こっちさ来う。」ところがなんの返事も闻こえません。黒板から降る白墨の粉のような、暗い冷たい雾の粒が、そこら一面踊りまわり、あたりがにわかにシインとして、阴気に阴気になりました。草からは、もうしずくの音がポタリポタリと闻こえて来ます。

嘉助は、もう早く一郎たちの所へ戻ろうとして急いで引っ返しました。けれどもどうも、それは前に来た所とは违っていたようでした。第一、あざみがあんまりたくさんありましたし、それに草の底にさっきなかった岩かけが、たびたびころがっていました。そしてとうとう闻いたこともない大きな谷が、いきなり目の前に现われました。すすきがざわざわざわっと鸣り、向こうのほうは底知れずの谷のように、雾の中に消えているではありませんか。

风が来ると、すすきの穂は细いたくさんの手をいっぱいのばして、忙しく振って、

「あ、西さん、あ、东さん、あ、西さん、あ、南さん、あ、西さん。」なんて言っているようでした。

嘉助はあんまり见っともなかったので、目をつむって横を向きました。そして急いで引っ返しました。小さな黒い道がいきなり草の中に出て来ました。それはたくさんの马のひづめの迹でできあがっていたのです。嘉助は梦中で短い笑い声をあげて、その道をぐんぐん歩きました。

けれども、たよりのないことは、みちのはばが五寸ぐらいになったり、また三尺ぐらいに変わったり、おまけになんだかぐるっと回っているように思われました。そして、とうとう大きなてっぺんの焼けた栗(くり)の木の前まで来た时、ぼんやり几つにも别れてしまいました。

そこはたぶんは、野马の集まり场所であったでしょう。雾の中に丸い広场のように见えたのです。

嘉助はがっかりして、黒い道をまた戻りはじめました。知らない草穂が静かにゆらぎ、少し强い风が来る时は、どこかで何かが合図をしてでもいるように、一面の草が、それ来たっとみなからだを伏せて避けました。

空が光ってキインキインと鸣っています。

それからすぐ目の前の雾の中に、家の形の大きな黒いものがあらわれました。嘉助はしばらく自分の目を疑って立ちどまっていましたが、やはりどうしても家らしかったので、こわごわもっと近寄って见ますと、それは冷たい大きな黒い岩でした。

空がくるくるくるっと白く揺らぎ、草がバラッと一度にしずくを払いました。

(间违って原の向こう侧へおりれば、又三郎もおれも、もう死ぬばかりだ。)と嘉助は半分思うように半分つぶやくようにしました。それから叫びました。

「一郎、一郎、いるが。一郎。」

また明るくなりました。草がみないっせいによろこびの息をします。

「伊佐戸(いさど)の町の、电気工夫の童(わらす)あ、山男に手足いしばらえてたふだ。」といつかだれかの话した言叶が、はっきり耳に闻こえて来ます。

そして、黒い道がにわかに消えてしまいました。あたりがほんのしばらくしいんとなりました。それから非常に强い风が吹いて来ました。

空が旗のようにぱたぱた光って飜り、火花がパチパチパチッと燃えました。嘉助はとうとう草の中に倒れてねむってしまいました。

そんなことはみんなどこかの远いできごとのようでした。

もう又三郎がすぐ目の前に足を投げだしてだまって空を见あげているのです。いつかいつものねずみいろの上着の上にガラスのマントを着ているのです。それから光るガラスの靴(くつ)をはいているのです。

又三郎の肩には栗(くり)の木の影が青く落ちています。又三郎の影は、また青く草に落ちています。そして风がどんどんどんどん吹いているのです。

又三郎は笑いもしなければ物も言いません。ただ小さなくちびるを强そうにきっと结んだまま黙ってそらを见ています。いきなり又三郎はひらっとそらへ飞びあがりました。ガラスのマントがギラギラ光りました。

ふと嘉助は目をひらきました。灰いろの雾が速く速く飞んでいます。

そして马がすぐ目の前にのっそりと立っていたのです。その目は嘉助を恐れて横のほうを向いていました。

嘉助ははね上がって马の名札を押えました。そのうしろから三郎がまるで色のなくなったくちびるをきっと结んでこっちへ出てきました。

嘉助はぶるぶるふるえました。

「おうい。」雾の中から一郎のにいさんの声がしました。雷もごろごろ鸣っています。

「おおい、嘉助。いるが。嘉助。」一郎の声もしました。嘉助はよろこんでとびあがりました。

「おおい。いる、いる。一郎。おおい。」

一郎のにいさんと一郎が、とつぜん目の前に立ちました。嘉助はにわかに泣き出しました。

「捜したぞ。あぶながったぞ。すっかりぬれだな。どう。」一郎のにいさんはなれた手つきで马の首を抱いて、もってきたくつわをすばやく马のくちにはめました。

「さあ、あべさ。」

「又三郎びっくりしたべあ。」一郎が三郎に言いました。三郎はだまって、やっぱりきっと口を结んでうなずきました。

みんなは一郎のにいさんについて、ゆるい倾斜を二つほどのぼり降りしました。それから、黒い大きな道について、しばらく歩きました。

稲光りが二度ばかり、かすかに白くひらめきました。草を焼くにおいがして、雾の中を烟がぼうっと流れています。

一郎のにいさんが叫びました。

「おじいさん。いだ、いだ。みんないだ。」

おじいさんは雾の中に立っていて、

「ああ心配した、心配した。ああよがった。おお嘉助。寒がべあ、さあはいれ。」と言いました。嘉助は一郎と同じようにやはりこのおじいさんの孙なようでした。

半分に焼けた大きな栗(くり)の木の根もとに、草で作った小さな囲いがあって、チョロチョロ赤い火が燃えていました。

一郎のにいさんは马を楢(なら)の木につなぎました。

马もひひんと鸣いています。

「おおむぞやな。な。なんぼが泣いだがな。そのわろは金山掘りのわろだな。さあさあみんな団子たべろ。食べろ。な、今こっちを焼ぐがらな。全体どこまで行ってだった。」

「笹长根(ささながね)のおり口だ。」と一郎のにいさんが答えました。

「あぶないがった。あぶないがった。向こうさ降りだら马も人もそれっ切りだったぞ。さあ嘉助、団子食べろ。このわろもたべろ。さあさあ、こいづも食べろ。」

「おじいさん。马置いでくるが。」と一郎のにいさんが言いました。

「うんうん。牧夫来るどまだやがましがらな、したども、も少し待で。またすぐ晴れる。ああ心配した。おれも虎(とら)こ山(やま)の下まで行って见で来た。はあ、まんつよがった。雨も晴れる。」

「けさほんとに天気よがったのにな。」

「うん。またよぐなるさ、あ、雨漏って来たな。」

一郎のにいさんが出て行きました。天井がガサガサガサガサ言います。おじいさんが笑いながらそれを见上げました。

にいさんがまたはいって来ました。

「おじいさん。明るぐなった。雨あ霁(は)れだ。」

「うんうん、そうが。さあみんなよっく火にあだれ、おらまた草刈るがらな。」

雾がふっと切れました。日の光がさっと流れてはいりました。その太阳は、少し西のほうに寄ってかかり、几片かの蝋(ろう)のような雾が、逃げおくれてしかたなしに光りました。

草からはしずくがきらきら落ち、すべての叶も茎も花も、ことしの终わりの日の光を吸っています。

はるかな西の碧(あお)い野原は、今泣きやんだようにまぶしく笑い、向こうの栗(くり)の木は青い後光を放ちました。

みんなはもう疲れて一郎をさきに野原をおりました。わき水のところで三郎はやっぱりだまって、きっと口を结んだままみんなに别れて、じぶんだけおとうさんの小屋のほうへ帰って行きました。

帰りながら嘉助が言いました。

「あいづやっぱり风の神だぞ。风の神の子っ子だぞ。あそごさ二人して巣食ってるんだぞ。」

「そだないよ。」一郎が高く言いました。

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