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中日对照《银河铁道之夜》赏析9

发表时间:2012/2/10 15:53:54 来源:互联网 点击关注微信:关注中大网校微信
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 银河鉄道の夜

宫沢贤治

九、ジョバンニの切符(きっぷ)

「もうここらは白鸟区のおしまいです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観测所です。」

窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四栋(むね)ばかり立って、その一つの平屋根の上に、眼(め)もさめるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパース)の大きな二つのすきとおった球が、轮になってしずかにくるくるとまわっていました。黄いろのがだんだん向うへまわって行って、青い小さいのがこっちへ进んで来、间もなく二つのはじは、重なり合って、きれいな緑いろの両面凸(とつ)レンズのかたちをつくり、それもだんだん、まん中がふくらみ出して、とうとう青いのは、すっかりトパースの正面に来ましたので、緑の中心と黄いろな明るい环(わ)とができました。それがまただんだん横へ外(そ)れて、前のレンズの形を逆に缲(く)り返し、とうとうすっとはなれて、サファイアは向うへめぐり、黄いろのはこっちへ进み、また丁度さっきのような风になりました。银河の、かたちもなく音もない水にかこまれて、ほんとうにその黒い测候所が、睡(ねむ)っているように、しずかによこたわったのです。

「あれは、水の速さをはかる器械です。水も……。」鸟捕(とりと)りが云いかけたとき、

「切符を拝见いたします。」三人の席の横に、赤い帽子(ぼうし)をかぶったせいの高い车掌(しゃしょう)が、いつかまっすぐに立っていて云いました。鸟捕りは、だまってかくしから、小さな纸きれを出しました。车掌はちょっと见て、すぐ眼をそらして、(あなた方のは?)というように、指をうごかしながら、手をジョバンニたちの方へ出しました。

「さあ、」ジョバンニは困って、もじもじしていましたら、カムパネルラは、わけもないという风で、小さな鼠(ねずみ)いろの切符を出しました。ジョバンニは、すっかりあわててしまって、もしか上着のポケットにでも、入っていたかとおもいながら、手を入れて见ましたら、何か大きな畳(たた)んだ纸きれにあたりました。こんなもの入っていたろうかと思って、急いで出してみましたら、それは四つに折ったはがきぐらいの大きさの緑いろの纸でした。车掌が手を出しているもんですから何でも构わない、やっちまえと思って渡しましたら、车掌はまっすぐに立ち直って叮宁(ていねい)にそれを开いて见ていました。そして読みながら上着のぼたんやなんかしきりに直したりしていましたし灯台看守も下からそれを热心にのぞいていましたから、ジョバンニはたしかにあれは证明书か何かだったと考えて少し胸が热くなるような気がしました。

「これは三次空间の方からお持ちになったのですか。」车掌がたずねました。

「何だかわかりません。」もう大丈夫(だいじょうぶ)だと安心しながらジョバンニはそっちを见あげてくつくつ笑いました。

「よろしゅうございます。南十字(サウザンクロス)へ着きますのは、次の第三时ころになります。」车掌は纸をジョバンニに渡して向うへ行きました。

カムパネルラは、その纸切れが何だったか待ち兼ねたというように急いでのぞきこみました。ジョバンニも全く早く见たかったのです。ところがそれはいちめん黒い唐草(からくさ)のような模様の中に、おかしな十ばかりの字を印刷したものでだまって见ていると何だかその中へ吸い込(こ)まれてしまうような気がするのでした。すると鸟捕りが横からちらっとそれを见てあわてたように云いました。

「おや、こいつは大したもんですぜ。こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも胜手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想(げんそう)第四次の银河鉄道なんか、どこまででも行ける筈(はず)でさあ、あなた方大したもんですね。」

「何だかわかりません。」ジョバンニが赤くなって答えながらそれを又(また)畳んでかくしに入れました。そしてきまりが悪いのでカムパネルラと二人、また窓の外をながめていましたが、その鸟捕りの时々大したもんだというようにちらちらこっちを见ているのがぼんやりわかりました。

「もうじき鹫(わし)の停车场だよ。」カムパネルラが向う岸の、三つならんだ小さな青じろい三角标と地図とを见较(みくら)べて云いました。

ジョバンニはなんだかわけもわからずににわかにとなりの鸟捕りが気の毒でたまらなくなりました。鹭(さぎ)をつかまえてせいせいしたとよろこんだり、白いきれでそれをくるくる包んだり、ひとの切符をびっくりしたように横目で见てあわててほめだしたり、そんなことを一一考えていると、もうその见ず知らずの鸟捕りのために、ジョバンニの持っているものでも食べるものでもなんでもやってしまいたい、もうこの人のほんとうの幸(さいわい)になるなら自分があの光る天の川の河原(かわら)に立って百年つづけて立って鸟をとってやってもいいというような気がして、どうしてももう黙(だま)っていられなくなりました。ほんとうにあなたのほしいものは一体何ですか、と讯(き)こうとして、それではあんまり出し抜(ぬ)けだから、どうしようかと考えて振(ふ)り返って见ましたら、そこにはもうあの鸟捕りが居ませんでした。网棚(あみだな)の上には白い荷物も见えなかったのです。また窓の外で足をふんばってそらを见上げて鹭を捕る支度(したく)をしているのかと思って、急いでそっちを见ましたが、外はいちめんのうつくしい砂子と白いすすきの波ばかり、あの鸟捕りの広いせなかも尖(とが)った帽子も见えませんでした。

「あの人どこへ行ったろう。」カムパネルラもぼんやりそう云っていました。

「どこへ行ったろう。一体どこでまたあうのだろう。仆(ぼく)はどうしても少しあの人に物を言わなかったろう。」

「ああ、仆もそう思っているよ。」

「仆はあの人が邪魔(じゃま)なような気がしたんだ。だから仆は大へんつらい。」ジョバンニはこんな変てこな気もちは、ほんとうにはじめてだし、こんなこと今まで云ったこともないと思いました。

「何だか苹果(りんご)の匂(におい)がする。仆いま苹果のこと考えたためだろうか。」カムパネルラが不思议そうにあたりを见まわしました。

「ほんとうに苹果の匂だよ。それから野茨(のいばら)の匂もする。」ジョバンニもそこらを见ましたがやっぱりそれは窓からでも入って来るらしいのでした。いま秋だから野茨の花の匂のする筈はないとジョバンニは思いました。

そしたら俄(にわ)かにそこに、つやつやした黒い髪(かみ)の六つばかりの男の子が赤いジャケツのぼたんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふるえてはだしで立っていました。隣(とな)りには黒い洋服をきちんと着たせいの高い青年が一ぱいに风に吹(ふ)かれているけやきの木のような姿势で、男の子の手をしっかりひいて立っていました。

「あら、ここどこでしょう。まあ、きれいだわ。」青年のうしろにもひとり十二ばかりの眼の茶いろな可爱(かあい)らしい女の子が黒い外套(がいとう)を着て青年の腕(うで)にすがって不思议そうに窓の外を见ているのでした。

「ああ、ここはランカシャイヤだ。いや、コンネクテカット州だ。いや、ああ、ぼくたちはそらへ来たのだ。わたしたちは天へ行くのです。ごらんなさい。あのしるしは天上のしるしです。もうなんにもこわいことありません。わたくしたちは神さまに召(め)されているのです。」黒服の青年はよろこびにかがやいてその女の子に云(い)いました。けれどもなぜかまた额に深く皱(しわ)を刻んで、それに大へんつかれているらしく、无理に笑いながら男の子をジョバンニのとなりに座(すわ)らせました。

それから女の子にやさしくカムパネルラのとなりの席を指さしました。女の子はすなおにそこへ座って、きちんと両手を组み合せました。

「ぼくおおねえさんのとこへ行くんだよう。」腰挂(こしか)けたばかりの男の子は顔を変にして灯台看守の向うの席に座ったばかりの青年に云いました。青年は何とも云えず悲しそうな顔をして、じっとその子の、ちぢれてぬれた头を见ました。女の子は、いきなり両手を顔にあててしくしく泣いてしまいました。

「お父さんやきくよねえさんはまだいろいろお仕事があるのです。けれどももうすぐあとからいらっしゃいます。それよりも、おっかさんはどんなに永く待っていらっしゃったでしょう。わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたっているだろう、雪の降る朝にみんなと手をつないでぐるぐるにわとこのやぶをまわってあそんでいるだろうかと考えたりほんとうに待って心配していらっしゃるんですから、早く行っておっかさんにお目にかかりましょうね。」

「うん、だけど仆、船に乗らなけぁよかったなあ。」

「ええ、けれど、ごらんなさい、そら、どうです、あの立派な川、ね、あすこはあの夏中、ツインクル、ツインクル、リトル、スター をうたってやすむとき、いつも窓からぼんやり白く见えていたでしょう。あすこですよ。ね、きれいでしょう、あんなに光っています。」

泣いていた姉もハンケチで眼をふいて外を见ました。青年は教えるようにそっと姉弟にまた云いました。

「わたしたちはもうなんにもかなしいことないのです。わたしたちはこんないいとこを旅して、じき神さまのとこへ行きます。そこならもうほんとうに明るくて匂がよくて立派な人たちでいっぱいです。そしてわたしたちの代りにボートへ乗れた人たちは、きっとみんな助けられて、心配して待っているめいめいのお父さんやお母さんや自分のお家へやら行くのです。さあ、もうじきですから元気を出しておもしろくうたって行きましょう。」青年は男の子のぬれたような黒い髪をなで、みんなを慰(なぐさ)めながら、自分もだんだん顔いろがかがやいて来ました。

「あなた方はどちらからいらっしゃったのですか。どうなすったのですか。」さっきの灯台看守がやっと少しわかったように青年にたずねました。青年はかすかにわらいました。

「いえ、氷山にぶっつかって船が沈(しず)みましてね、わたしたちはこちらのお父さんが急な用で二ヶ月前一足さきに本国へお帰りになったのであとから発(た)ったのです。私は大学へはいっていて、家庭教师にやとわれていたのです。ところがちょうど十二日目、今日か昨日(きのう)のあたりです、船が氷山にぶっつかって一ぺんに倾(かたむ)きもう沈みかけました。月のあかりはどこかぼんやりありましたが、雾(きり)が非常に深かったのです。ところがボートは左舷(さげん)の方半分はもうだめになっていましたから、とてもみんなは乗り切らないのです。もうそのうちにも船は沈みますし、私は必死となって、どうか小さな人たちを乗せて下さいと叫(さけ)びました。近くの人たちはすぐみちを开いてそして子供たちのために祈(いの)って呉(く)れました。けれどもそこからボートまでのところにはまだまだ小さな子どもたちや亲たちやなんか居て、とても押(お)しのける勇気がなかったのです。それでもわたくしはどうしてもこの方たちをお助けするのが私の义务だと思いましたから前にいる子供らを押しのけようとしました。けれどもまたそんなにして助けてあげるよりはこのまま神のお前にみんなで行く方がほんとうにこの方たちの幸福だとも思いました。それからまたその神にそむく罪はわたくしひとりでしょってぜひとも助けてあげようと思いました。けれどもどうして见ているとそれができないのでした。子どもらばかりボートの中へはなしてやってお母さんが狂気(きょうき)のようにキスを送りお父さんがかなしいのをじっとこらえてまっすぐに立っているなどとてももう肠(はらわた)もちぎれるようでした。そのうち船はもうずんずん沈みますから、私はもうすっかり覚悟(かくご)してこの人たち二人を抱(だ)いて、浮(うか)べるだけは浮ぼうとかたまって船の沈むのを待っていました。谁(たれ)が投げたかライフブイが一つ飞んで来ましたけれども滑(すべ)ってずうっと向うへ行ってしまいました。私は一生けん命で甲板(かんぱん)の格子(こうし)になったとこをはなして、三人それにしっかりとりつきました。どこからともなく〔约二字分空白〕番の声があがりました。たちまちみんなはいろいろな国语で一ぺんにそれをうたいました。そのとき俄(にわ)かに大きな音がして私たちは水に落ちもう涡(うず)に入ったと思いながらしっかりこの人たちをだいてそれからぼうっとしたと思ったらもうここへ来ていたのです。この方たちのお母さんは一昨年没(な)くなられました。ええボートはきっと助かったにちがいありません、何せよほど熟练な水夫たちが漕(こ)いですばやく船からはなれていましたから。」

そこらから小さないのりの声が闻えジョバンニもカムパネルラもいままで忘れていたいろいろのことをぼんやり思い出して眼(め)が热くなりました。

(ああ、その大きな海はパシフィックというのではなかったろうか。その氷山の流れる北のはての海で、小さな船に乗って、风や冻(こお)りつく潮水や、烈(はげ)しい寒さとたたかって、たれかが一生けんめいはたらいている。ぼくはそのひとにほんとうに気の毒でそしてすまないような気がする。ぼくはそのひとのさいわいのためにいったいどうしたらいいのだろう。)ジョバンニは首を垂れて、すっかりふさぎ込(こ)んでしまいました。

「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを进む中でのできごとなら峠(とうげ)の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」

灯台守がなぐさめていました。

「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです。」

青年が祈るようにそう答えました。

そしてあの姉弟(きょうだい)はもうつかれてめいめいぐったり席によりかかって睡(ねむ)っていました。さっきのあのはだしだった足にはいつか白い柔(やわ)らかな靴(くつ)をはいていたのです。

ごとごとごとごと汽车はきらびやかな磷光(りんこう)の川の岸を进みました。向うの方の窓を见ると、野原はまるで幻灯(げんとう)のようでした。百も千もの大小さまざまの三角标、その大きなものの上には赤い点点をうった测量旗も见え、野原のはてはそれらがいちめん、たくさんたくさん集ってぼおっと青白い雾のよう、そこからかまたはもっと向うからかときどきさまざまの形のぼんやりした狼烟(のろし)のようなものが、かわるがわるきれいな桔梗(ききょう)いろのそらにうちあげられるのでした。じつにそのすきとおった奇丽(きれい)な风は、ばらの匂(におい)でいっぱいでした。

「いかがですか。こういう苹果(りんご)はおはじめてでしょう。」向うの席の灯台看守がいつか黄金(きん)と红でうつくしくいろどられた大きな苹果を落さないように両手で膝(ひざ)の上にかかえていました。

「おや、どっから来たのですか。立派ですねえ。ここらではこんな苹果ができるのですか。」青年はほんとうにびっくりしたらしく灯台看守の両手にかかえられた一もりの苹果を眼を细くしたり首をまげたりしながらわれを忘れてながめていました。

「いや、まあおとり下さい。どうか、まあおとり下さい。」

青年は一つとってジョバンニたちの方をちょっと见ました。

「さあ、向うの坊(ぼっ)ちゃんがた。いかがですか。おとり下さい。」

ジョバンニは坊ちゃんといわれたのですこししゃくにさわってだまっていましたがカムパネルラは

「ありがとう、」と云いました。すると青年は自分でとって一つずつ二人に送ってよこしましたのでジョバンニも立ってありがとうと云いました。

灯台看守はやっと両腕(りょううで)があいたのでこんどは自分で一つずつ睡っている姉弟の膝にそっと置きました。

「どうもありがとう。どこでできるのですか。こんな立派な苹果は。」

青年はつくづく见ながら云いました。

「この辺ではもちろん农业はいたしますけれども大ていひとりでにいいものができるような约束(やくそく)になって居(お)ります。农业だってそんなに骨は折れはしません。たいてい自分の望む种子(たね)さえ播(ま)けばひとりでにどんどんできます。米だってパシフィック辺のように殻(から)もないし十倍も大きくて匂もいいのです。けれどもあなたがたのいらっしゃる方なら农业はもうありません。苹果だってお菓子だってかすが少しもありませんからみんなそのひとそのひとによってちがったわずかのいいかおりになって毛あなからちらけてしまうのです。」

にわかに男の子がぱっちり眼をあいて云いました。

「ああぼくいまお母さんの梦(ゆめ)をみていたよ。お母さんがね立派な戸棚(とだな)や本のあるとこに居てね、ぼくの方を见て手をだしてにこにこにこにこわらったよ。ぼくおっかさん。りんごをひろってきてあげましょうか云ったら眼がさめちゃった。ああここさっきの汽车のなかだねえ。」

「その苹果(りんご)がそこにあります。このおじさんにいただいたのですよ。」青年が云いました。

「ありがとうおじさん。おや、かおるねえさんまだねてるねえ、ぼくおこしてやろう。ねえさん。ごらん、りんごをもらったよ。おきてごらん。」

姉はわらって眼をさましまぶしそうに両手を眼にあててそれから苹果を见ました。男の子はまるでパイを喰(た)べるようにもうそれを喰べていました、また折角(せっかく)剥(む)いたそのきれいな皮も、くるくるコルク抜(ぬ)きのような形になって床(ゆか)へ落ちるまでの间にはすうっと、灰いろに光って蒸発してしまうのでした。

二人はりんごを大切にポケットにしまいました。

川下の向う岸に青く茂(しげ)った大きな林が见え、その枝(えだ)には熟してまっ赤に光る円い実がいっぱい、その林のまん中に高い高い三角标が立って、森の中からはオーケストラベルやジロフォンにまじって何とも云えずきれいな音いろが、とけるように浸(し)みるように风につれて流れて来るのでした。

青年はぞくっとしてからだをふるうようにしました。

だまってその谱(ふ)を闻いていると、そこらにいちめん黄いろやうすい緑の明るい野原か敷物かがひろがり、またまっ白な蝋(ろう)のような露(つゆ)が太阳の面を擦(かす)めて行くように思われました。

「まあ、あの乌(からす)。」カムパネルラのとなりのかおると呼ばれた女の子が叫びました。

「からすでない。みんなかささぎだ。」カムパネルラがまた何気なく叱(しか)るように叫びましたので、ジョバンニはまた思わず笑い、女の子はきまり悪そうにしました。まったく河原(かわら)の青じろいあかりの上に、黒い鸟がたくさんたくさんいっぱいに列になってとまってじっと川の微光(びこう)を受けているのでした。

「かささぎですねえ、头のうしろのとこに毛がぴんと延びてますから。」青年はとりなすように云いました。

向うの青い森の中の三角标はすっかり汽车の正面に来ました。そのとき汽车のずうっとうしろの方からあの闻きなれた〔约二字分空白〕番の讃美歌(さんびか)のふしが闻えてきました。よほどの人数で合唱しているらしいのでした。青年はさっと顔いろが青ざめ、たって一ぺんそっちへ行きそうにしましたが思いかえしてまた座(すわ)りました。かおる子はハンケチを顔にあててしまいました。ジョバンニまで何だか鼻が変になりました。けれどもいつともなく谁(たれ)ともなくその歌は歌い出されだんだんはっきり强くなりました。思わずジョバンニもカムパネルラも一绪(いっしょ)にうたい出したのです。

 

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