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《夜鹰之星》赏析(日语)

发表时间:2012/2/3 14:06:26 来源:互联网 点击关注微信:关注中大网校微信
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 よだかの星

宫沢贤治

よだかは、実にみにくい鸟です。

顔は、ところどころ、味噌(みそ)をつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。

足は、まるでよぼよぼで、一间(いっけん)とも歩けません。

ほかの鸟は、もう、よだかの顔を见ただけでも、いやになってしまうという工合(ぐあい)でした。

たとえば、ひばりも、あまり美しい鸟ではありませんが、よだかよりは、ずっと上だと思っていましたので、夕方など、よだかにあうと、さもさもいやそうに、しんねりと目をつぶりながら、首をそっ方(ぽ)へ向けるのでした。もっとちいさなおしゃべりの鸟などは、いつでもよだかのまっこうから悪口をしました。

「ヘン。又(また)出て来たね。まあ、あのざまをごらん。ほんとうに、鸟の仲间のつらよごしだよ。」

「ね、まあ、あのくちのおおきいことさ。きっと、かえるの亲类か何かなんだよ。」

こんな调子です。おお、よだかでないただのたかならば、こんな生(なま)はんかのちいさい鸟は、もう名前を闻いただけでも、ぶるぶるふるえて、顔色を変えて、からだをちぢめて、木の叶のかげにでもかくれたでしょう。ところが夜だかは、ほんとうは鹰(たか)の兄弟でも亲类でもありませんでした。かえって、よだかは、あの美しいかわせみや、鸟の中の宝石のような蜂(はち)すずめの兄さんでした。蜂すずめは花の蜜(みつ)をたべ、かわせみはお鱼を食べ、夜だかは羽虫をとってたべるのでした。それによだかには、するどい爪(つめ)もするどいくちばしもありませんでしたから、どんなに弱い鸟でも、よだかをこわがる筈(はず)はなかったのです。

それなら、たかという名のついたことは不思议なようですが、これは、一つはよだかのはねが无暗(むやみ)に强くて、风を切って翔(か)けるときなどは、まるで鹰のように见えたことと、も一つはなきごえがするどくて、やはりどこか鹰に似ていた为(ため)です。もちろん、鹰は、これをひじょうに気にかけて、いやがっていました。それですから、よだかの顔さえ见ると、肩(かた)をいからせて、早く名前をあらためろ、名前をあらためろと、いうのでした。

ある夕方、とうとう、鹰がよだかのうちへやって参りました。

「おい。居るかい。まだお前は名前をかえないのか。ずいぶんお前も耻(はじ)知らずだな。お前とおれでは、よっぽど人格がちがうんだよ。たとえばおれは、青いそらをどこまででも飞んで行く。おまえは、昙(くも)ってうすぐらい日か、夜でなくちゃ、出て来ない。それから、おれのくちばしやつめを见ろ。そして、よくお前のとくらべて见るがいい。」

「鹰さん。それはあんまり无理です。私の名前は私が胜手につけたのではありません。神さまから下さったのです。」

「いいや。おれの名なら、神さまから贳(もら)ったのだと云(い)ってもよかろうが、お前のは、云わば、おれと夜と、両方から借りてあるんだ。さあ返せ。」

「鹰さん。それは无理です。」

「无理じゃない。おれがいい名を教えてやろう。市蔵(いちぞう)というんだ。市蔵とな。いい名だろう。そこで、名前を変えるには、改名の披露(ひろう)というものをしないといけない。いいか。それはな、首へ市蔵と书いたふだをぶらさげて、私は以来市蔵と申しますと、口上(こうじょう)を云って、みんなの所をおじぎしてまわるのだ。」

「そんなことはとても出来ません。」

「いいや。出来る。そうしろ。もしあさっての朝までに、お前がそうしなかったら、もうすぐ、つかみ杀すぞ。つかみ杀してしまうから、そう思え。おれはあさっての朝早く、鸟のうちを一轩(けん)ずつまわって、お前が来たかどうかを闻いてあるく。一轩でも来なかったという家があったら、もう贵様もその时がおしまいだぞ。」

「だってそれはあんまり无理じゃありませんか。そんなことをする位なら、私はもう死んだ方がましです。今すぐ杀して下さい。」

「まあ、よく、あとで考えてごらん。市蔵なんてそんなにわるい名じゃないよ。」鹰は大きなはねを一杯(いっぱい)にひろげて、自分の巣(す)の方へ飞んで帰って行きました。

よだかは、じっと目をつぶって考えました。

(一たい仆(ぼく)は、なぜこうみんなにいやがられるのだろう。仆の顔は、味噌をつけたようで、口は裂(さ)けてるからなあ。それだって、仆は今まで、なんにも悪いことをしたことがない。赤ん坊(ぼう)のめじろが巣から落ちていたときは、助けて巣へ连れて行ってやった。そしたらめじろは、赤ん坊をまるでぬす人からでもとりかえすように仆からひきはなしたんだなあ。それからひどく仆を笑ったっけ。それにああ、今度は市蔵だなんて、首へふだをかけるなんて、つらいはなしだなあ。)

あたりは、もううすくらくなっていました。夜だかは巣から飞び出しました。云が意地悪く光って、低くたれています。夜だかはまるで云とすれすれになって、音なく空を飞びまわりました。

それからにわかによだかは口を大きくひらいて、はねをまっすぐに张って、まるで矢のようにそらをよこぎりました。小さな羽虫が几匹(いくひき)も几匹もその咽喉(のど)にはいりました。

からだがつちにつくかつかないうちに、よだかはひらりとまたそらへはねあがりました。もう云は鼠色(ねずみいろ)になり、向うの山には山焼けの火がまっ赤です。

夜だかが思い切って飞ぶときは、そらがまるで二つに切れたように思われます。一疋(ぴき)の甲虫(かぶとむし)が、夜だかの咽喉にはいって、ひどくもがきました。よだかはすぐそれを呑(の)みこみましたが、その时何だかせなかがぞっとしたように思いました。

云はもうまっくろく、东の方だけ山やけの火が赤くうつって、恐(おそ)ろしいようです。よだかはむねがつかえたように思いながら、又そらへのぼりました。

また一疋の甲虫が、夜だかののどに、はいりました。そしてまるでよだかの咽喉をひっかいてばたばたしました。よだかはそれを无理にのみこんでしまいましたが、その时、急に胸がどきっとして、夜だかは大声をあげて泣き出しました。泣きながらぐるぐるぐるぐる空をめぐったのです。

(ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩仆に杀される。そしてそのただ一つの仆がこんどは鹰に杀される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。仆はもう虫をたべないで饿(う)えて死のう。いやその前にもう鹰が仆を杀すだろう。いや、その前に、仆は远くの远くの空の向うに行ってしまおう。)

山焼けの火は、だんだん水のように流れてひろがり、云も赤く燃えているようです。

よだかはまっすぐに、弟の川せみの所へ飞んで行きました。きれいな川せみも、丁度起きて远くの山火事を见ていた所でした。そしてよだかの降りて来たのを见て云いました。

「兄さん。今晩は。何か急のご用ですか。」

「いいや、仆は今度远い所へ行くからね、その前一寸(ちょっと)お前に遭(あ)いに来たよ。」

「兄さん。行っちゃいけませんよ。蜂雀(はちすずめ)もあんな远くにいるんですし、仆ひとりぼっちになってしまうじゃありませんか。」

「それはね。どうも仕方ないのだ。もう今日は何も云わないで呉(く)れ。そしてお前もね、どうしてもとらなければならない时のほかはいたずらにお鱼を取ったりしないようにして呉れ。ね、さよなら。」

「兄さん。どうしたんです。まあもう一寸お待ちなさい。」

「いや、いつまで居てもおんなじだ。はちすずめへ、あとでよろしく云ってやって呉れ。さよなら。もうあわないよ。さよなら。」

よだかは泣きながら自分のお家(うち)へ帰って参りました。みじかい夏の夜はもうあけかかっていました。

羊歯(しだ)の叶は、よあけの雾(きり)を吸って、青くつめたくゆれました。よだかは高くきしきしきしと鸣きました。そして巣の中をきちんとかたづけ、きれいにからだ中のはねや毛をそろえて、また巣から飞び出しました。

雾がはれて、お日さまが丁度东からのぼりました。夜だかはぐらぐらするほどまぶしいのをこらえて、矢のように、そっちへ飞んで行きました。

「お日さん、お日さん。どうぞ私をあなたの所へ连れてって下さい。灼(や)けて死んでもかまいません。私のようなみにくいからだでも灼けるときには小さなひかりを出すでしょう。どうか私を连れてって下さい。」

行っても行っても、お日さまは近くなりませんでした。かえってだんだん小さく远くなりながらお日さまが云いました。

「お前はよだかだな。なるほど、ずいぶんつらかろう。今度そらを飞んで、星にそうたのんでごらん。お前はひるの鸟ではないのだからな。」

夜だかはおじぎを一つしたと思いましたが、急にぐらぐらしてとうとう野原の草の上に落ちてしまいました。そしてまるで梦(ゆめ)を见ているようでした。からだがずうっと赤や黄の星のあいだをのぼって行ったり、どこまでも风に飞ばされたり、又鹰が来てからだをつかんだりしたようでした。

つめたいものがにわかに顔に落ちました。よだかは眼(め)をひらきました。一本の若いすすきの叶から露(つゆ)がしたたったのでした。もうすっかり夜になって、空は青ぐろく、一面の星がまたたいていました。よだかはそらへ飞びあがりました。今夜も山やけの火はまっかです。よだかはその火のかすかな照りと、つめたいほしあかりの中をとびめぐりました。それからもう一ぺん飞びめぐりました。そして思い切って西のそらのあの美しいァ£ァ◇の星の方に、まっすぐに飞びながら叫(さけ)びました。

「お星さん。西の青じろいお星さん。どうか私をあなたのところへ连れてって下さい。灼けて死んでもかまいません。」

ァ£ァ◇は勇ましい歌をつづけながらよだかなどはてんで相手にしませんでした。よだかは泣きそうになって、よろよろと落ちて、それからやっとふみとまって、もう一ぺんとびめぐりました。それから、南の大犬座の方へまっすぐに飞びながら叫びました。

「お星さん。南の青いお星さん。どうか私をあなたの所へつれてって下さい。やけて死んでもかまいません。」

大犬は青や紫(むらさき)や黄やうつくしくせわしくまたたきながら云いました。

「马鹿を云うな。おまえなんか一体どんなものだい。たかが鸟じゃないか。おまえのはねでここまで来るには、亿年兆年亿兆年だ。」そしてまた别の方を向きました。

よだかはがっかりして、よろよろ落ちて、それから又二へん飞びめぐりました。それから又思い切って北の大熊星(おおぐまぼし)の方へまっすぐに飞びながら叫びました。

「北の青いお星さま、あなたの所へどうか私を连れてって下さい。」

大熊星はしずかに云いました。

「余计なことを考えるものではない。少し头をひやして来なさい。そう云うときは、氷山の浮(う)いている海の中へ飞び込(こ)むか、近くに海がなかったら、氷をうかべたコップの水の中へ飞び込むのが一等だ。」

よだかはがっかりして、よろよろ落ちて、それから又、四へんそらをめぐりました。そしてもう一度、东から今のぼった天(あま)の川(がわ)の向う岸の鹫(わし)の星に叫びました。

「东の白いお星さま、どうか私をあなたの所へ连れてって下さい。やけて死んでもかまいません。」

鹫は大风(おおふう)に云いました。

「いいや、とてもとても、话にも何にもならん。星になるには、それ相応の身分でなくちゃいかん。又よほど金もいるのだ。」

よだかはもうすっかり力を落してしまって、はねを闭じて、地に落ちて行きました。そしてもう一尺で地面にその弱い足がつくというとき、よだかは俄(にわ)かにのろしのようにそらへとびあがりました。そらのなかほどへ来て、よだかはまるで鹫が熊を袭(おそ)うときするように、ぶるっとからだをゆすって毛をさかだてました。

それからキシキシキシキシキシッと高く高く叫びました。その声はまるで鹰でした。野原や林にねむっていたほかのとりは、みんな目をさまして、ぶるぶるふるえながら、いぶかしそうにほしぞらを见あげました。

夜だかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。もう山焼けの火はたばこの吸殻(すいがら)のくらいにしか见えません。よだかはのぼってのぼって行きました。

寒さにいきはむねに白く冻(こお)りました。空気がうすくなった为に、はねをそれはそれはせわしくうごかさなければなりませんでした。

それだのに、ほしの大きさは、さっきと少しも変りません。つくいきはふいごのようです。寒さや霜(しも)がまるで剣のようによだかを刺(さ)しました。よだかははねがすっかりしびれてしまいました。そしてなみだぐんだ目をあげてもう一ぺんそらを见ました。そうです。これがよだかの最後でした。もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居(お)りました。

それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。そして自分のからだがいま磷(りん)の火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを见ました。

すぐとなりは、カシァ≡ア座でした。天の川の青じろいひかりが、すぐうしろになっていました。

そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。

今でもまだ燃えています。

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